好みの彼に弱みを握られていますっ!
「実感が得られないのは確かなので……いくら偽装とはいえ一緒に行くべきだったよね、とは思っています。――そもそも婚姻って、私たちふたりの問題なわけですし」
部下が上司に業務上の不備を異議申し立てするような調子で事務的にそう言ったら、宗親さんが小さく吐息を落とした。
私は宗親さんの溜め息に、心臓をギュッと鷲掴みにされてしまったような不安を覚える。
(面倒な女だと思われてしまったかな)
そう思うと居た堪れない気持ちになって、鼻の奥がツンと痛くなる。
だけど泣きたくなかったから、無意識に私、下唇を噛んでしまっていた。
「春凪、ダメですよ」
そんな私に宗親さんが優しくそう言って親指の腹で唇に触れて口を割り開く。
その優しい手つきが、本当は私、宗親さんに愛されているんじゃないかという錯覚を覚えさせるから、頭が混乱してしまった。
「すみません、春凪。僕の配慮が足りていませんでしたね。――だけど……そんなにがっかりしないで? 〝大丈夫です〟から」
それなのに、宗親さんはさらに追い討ちをかけるみたいに私をギュッと抱きしめて、優しく背中をトントンと叩いてくださるの。
部下が上司に業務上の不備を異議申し立てするような調子で事務的にそう言ったら、宗親さんが小さく吐息を落とした。
私は宗親さんの溜め息に、心臓をギュッと鷲掴みにされてしまったような不安を覚える。
(面倒な女だと思われてしまったかな)
そう思うと居た堪れない気持ちになって、鼻の奥がツンと痛くなる。
だけど泣きたくなかったから、無意識に私、下唇を噛んでしまっていた。
「春凪、ダメですよ」
そんな私に宗親さんが優しくそう言って親指の腹で唇に触れて口を割り開く。
その優しい手つきが、本当は私、宗親さんに愛されているんじゃないかという錯覚を覚えさせるから、頭が混乱してしまった。
「すみません、春凪。僕の配慮が足りていませんでしたね。――だけど……そんなにがっかりしないで? 〝大丈夫です〟から」
それなのに、宗親さんはさらに追い討ちをかけるみたいに私をギュッと抱きしめて、優しく背中をトントンと叩いてくださるの。