好みの彼に弱みを握られていますっ!
「あ、そうだ! 週末だしさ。これから……どう? 呼び掛ければ同期(みんな)、割とすぐ集まれると思うんだけど」

 身振り手振りでお酒を飲む仕草をされて、私は慌てて顔の前で手を振り回して頭を下げた。

「ごっ、ごめんなさいっ。今日は――」

 これから宗親(むねちか)さんとの初夜がっ。
 考えただけで顔がぶわりと熱を持ってしまう。

「あっ、もしかして彼氏とデート?」

 その表情を見て、そう思われてしまったみたい。

 至極もっともな足利(あしかが)くんの問いかけに、私は咄嗟、照れ隠しも手伝って「かっ、彼氏なんて居ないですっ」と答えてしまっていた。

 宗親さんは私の夫(偽装だけど)であって、彼氏ではない。……だから間違いじゃない、よ、ね?


 そんなことを思って、さっきより遠ざかってしまった宗親さんの後ろ姿を見つめる私に、足利くんが「そっか、彼氏いないんだ」と嬉しそうにつぶやいた。

 でも意識ここに在らずの私は、それには気付けなかった――。
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