好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そんな風に思ってしまって……でもそういう変なところでやたら真面目で理詰めなところがある宗親(むねちか)さんだからこそ、私は彼に惹かれたんだと思い至った。

 宗親さんは基本腹黒ドSのくせに、いつだってここぞと言う時には私と真摯に向き合ってくださるの。
 だから「愛されているのかも?」って【錯覚】させられるし、その錯覚のせいでどんどん貴方のことを好きになってしまう。

 お願いだからこれ以上馬鹿な私に勘違いさせないで?


「こっ、この震えは……そう、あれっ! む、武者震いですっ」

 場違いなセリフだというのは十分承知しているつもり。

 だけど「全てをさらけ出して、貴方に嫌われるかもって思うと不安で震えてしまうんです」、「好きになってくれない貴方を身体を使ってでも繋ぎ止めたくてこんなことをしているのが卑怯だと十二分に理解しているから……。そんな躊躇(ためら)いが手元を狂わせています」だなんて本音、口が裂けても言えるわけない。

 それでも宗親さんは、私の〝覚悟〟だけはしっかりと受け止めて下さったみたい。

「正直、まだ少し納得がいかない面も多々ありますが――」

 そう前置きをしてから、宗親さんは私の頭を優しく撫でていらした。


春凪(はな)、自分で脱ぐのがそんなに恥ずかしいなら、僕に脱がさせてもらえないかな?」

 問いかけるようにそう言って、そっと優しい口付けを落とすと、私の頬へご自分の頬を擦り寄せるようしてそうささやいていらした。

 その温かく包み込むような低音ボイスに、私は小さく頷いた。
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