好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 宗親(むねちか)さんは再度私の唇を熱を込めて塞ぐと、キスに集中して欲しいとでも言うみたいに薄く開いた口の隙間から温かく湿った柔らかな舌を差し入れてくる。

「……んっ、ふぁ」

 こうちゃんとキスしても決して声なんて漏れなかったのに。
 宗親さんとの口付けは自然と鼻に抜けるような甘えた声が漏れ出てしまうのは何故だろう。

 熱に浮かされた頭で、ぼんやりとそんなことを思っているうちに、肩からスルリとパジャマが落とされて――。

 えっ?

 と思う間もなく、宗親さんの大きな手のひらが胸の膨らみを直接包み込んできた。

 ゆるゆると私の胸の弾力と質感を確かめるみたいに、宗親さんの手が乳房に触れる。

 そのことが今更のようにすごく恥ずかしくなって、私は無意識に宗親さんの胸に手を付いて押し戻すような仕草をしてしまっていた。

 でもそれと同時、宗親(むねちか)さんの滑らかな肌にじかに触れてしまったことに驚いて、思わず手を引っ込めて。


 宗親さんは口付けを解くと、そんな私の顔をじっと見つめながら
春凪(はな)、どうかそのまま――」
 とつぶやいた。

 私がその言葉の真意を測りかねてソワソワと彼を見上げたら、「春凪も……そのまま僕に触れていて?」と切なそうに眉根を寄せるの。

 その表情がめちゃくちゃ色っぽくて、私はドキッとしてしまう。

「春凪に触れられるの、すごく気持ちいいんだ」

 ふっと吐息まじりにそんなことを付け加えてくるとか、ずるい。

 【私が】宗親さんにこんな表情(かお)をさせているんだと思ったら、胸の奥がキュン、と(うず)いた。

 今この時だけでも構わない。

 【私が】宗親さんのこと、独り占めしちゃえてるんだ。

 そう思えることがすっごくすっごく嬉しかった。
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