好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

春凪(はな)……」

 宗親(むねちか)さんに熱のこもった声音で呼びかけられて、私の身体は思わずピクッと反応して(はねて)しまう。

 超絶整ったハンサムなお顔もさることながら、私は宗親さんのこの低音イケボが大好きで。

 バー『Misoka(ミソカ)』で少々不躾(ぶしつけ)な言動をなさる宗親さんに初めて出会った時にも、彼が言葉を発するたびドキドキしたっけ、と思い出す。

 でもね、宗親さんのことを大好きになってしまった今、私の胸の高鳴りはあの時の比ではないの。

 今ここにいる私は、ミーハーみたいに宗親さんの外見だけに惹かれていたあの頃とは違う。

 腹黒で、ドSで、意地悪で。おバカな私をいっつも理詰めで丸め込んできて……。
 でも、ここぞという時には、そんな彼がとても優しく私を包み込んでくれる人だと知ってしまったから。

 宗親さんの内面も含めて愛してしまった今の私は、宗親さんにたった二文字。――「春凪」って名前を呼ばれただけで胸の奥がキュンと甘く(うず)いてしまうの。

 それなのにそれと同時、切ないくらいに苦しくなるのは単なるワガママだって分かってる。
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