好みの彼に弱みを握られていますっ!
 宗親(むねちか)さんのこと、私なんかが契約結婚で縛り付けることが出来たってだけでも有り得ないくらい幸せなことだと頭ではちゃんと理解出来ているのに。
 宗親さんの心を独り占め出来ないことを不遇だと感じて、囚われの我が身を呪いたくなってしまうほど、私の「アイシテル」は貪欲(どんよく)に膨らみ続けて、今もなお現在進行形で増殖中。

 いつかこの「アイシテル」気持ちが胸を突き破って私の心をバラバラに引き裂いて、私、何も感じなくなってしまう日がくるかもしれない。


(宗親さん、大好きです! 貴方のことを好き過ぎて苦しいです!)

 名前を呼ばれて泣きたくなって。
 もしもその気持ちを彼に向かって吐き出すことが出来たなら、私のこの息苦しさも、少しは解消されるのかな?

 でもきっと、言った途端宗親さんに困った顔をさせて、言わなきゃ良かったって後悔する。秘密にしておくべきだった、って(なげ)かなきゃいけなくなる。
 今よりもっともっと(みじ)めな気持ちになるの、分かり切ってる。


 だから私、彼に名前を呼ばれてすっごくすっごく嬉しくっても、同じように彼の名前を呼び返すだけに留めるの。

「宗親さん……」

 その後に続く、「アイシテル」も「ダイスキデス」も「ワタシヲアイシテホシイノ」も、胸の中だけで。
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