好みの彼に弱みを握られていますっ!
「んっ」

 春凪(はな)は自分は感じないと勝手に思い込んでいるけれどそんなの嘘だ。

 ほんの少し触れただけで切なそうに眉根を寄せて吐息を漏らすキミが不感症なわけないじゃないか。

 春凪が、自分は不感症なのだと自らを卑下していると知った時、僕は春凪の美しい身体を馬鹿にし、その繊細な心と尊厳を踏み躙った男に心底腹を立てたんだ。

 そのせいで春凪が僕にありのままの彼女の姿を見せることに怯えることも、その理由を考えればなるほどもっともだと頷けたけれど……だけどそんな男の言葉にいつまでも囚われて抜け出せない春凪自身にも、僕は物凄くモヤモヤしてしまった。

 春凪はどうして僕の言うことに耳を傾けようとしてくれないんだろう?

 僕はまだ、元カレほど春凪に信頼されていないと言うことだろうか。

 春凪が欠陥だと感じているところも、一切合切余すことなく全て丸っと愛せる自信があると言っても、春凪は全然信じてくれないから。

 言葉を連ねてもダメなら、僕はもう態度で見せるしかないじゃないか。
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