好みの彼に弱みを握られていますっ!
 僕の言葉に春凪(はな)がキョトンとしたのが分かった。
 今日は最後までしようとお互いに納得してベッドにいるはずなのに何を今更って思ったのかな。

 だけど僕は敢えて春凪にそれを問うことで、意識してもらいたいんだ。
 春凪が僕を受け入れることは、キミの意志なのだと。キミが望んだことなのだと。

 どこまで行っても僕は卑怯だよね。

 そうしてもらうことで、少しでもこの不毛な関係に〝そうじゃないところ〟を見出そうとしているんだから。

「今更……です」

 案の定春凪は僕から視線をそらせると、眉根を寄せて口元を歪ませた。

 だけど明るいからよく分かるんだ。
 春凪が照れて耳まで真っ赤にしてること。

「無理強いは……したくないから」

 どうあったって僕の方が立場が強い。
 春凪は以前、家にいるときは僕と対等でいたいと言ってくれたけれど、それにしたって根底の部分で力関係を全く意識しないなんて無理に決まってる。

 だから――。
 お願い、許可を頂戴?
 キミの意志で……僕を受け入れてもいいと思ってるって口にして?
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