好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そのやりとりで観念したのかな。

 小さく吐息を落とした春凪(はな)が、恥ずかしそうに僕を見上げてきて言った。

「……いい、です……。私はもう全部全部宗親(むねちか)さんのものなので……むしろ……え、遠慮しないで、その、貴方の思うように……奪、い尽くして頂きたい……です」

 想像した以上の熱烈な告白をもらった気がして思わず息を呑んだら、春凪がハッとしたような顔をして慌てて付け加えるんだ。

「へ、変な意味じゃなくてっ、ここまできたら……そ、そのっ……ま、まな板の上の鯉ですって意味ですっ。……お、重く捉えないでくださいっ」

 言って、真っ赤になって視線だけフイッと僕からそらせるのが可愛くて、僕は今すぐにでも春凪の中に分け入りたい衝動に駆られてしまう。


「――春凪。お願いだからあんまり僕を煽らないで?」

 ――ゴムをつける間でさえも、もどかしくなってしまうから。

 なんてガッついた10代の若造みたいな本音、言えるわけない。
< 371 / 571 >

この作品をシェア

pagetop