好みの彼に弱みを握られていますっ!
春凪(はな)は仕事、出来なくなってもいいって思ってるの?」

 聞けば、「まだ……入社したばかりなので……出来れば続けていたいです」とうかがうように僕を見上げてきて。

 それで、僕は気が付いた。

「もしかしてキミは……僕の妻になったから、とか色々考えて無理をしていませんか? お願いですからそう言うのはナシにしましょう? 僕はね、春凪には……僕に対して変な負い目を感じたりせず、自分の気持ちをちゃんと言える人であり続けて欲しいと思っています。そこがキミの魅力だって……、僕はキミのそう言うところが気に入ってるって……、前に話したことがあるの、忘れてしまいましたか?」

 春凪の頬に添えていた手で、彼女の顔を労わるようにそっと撫でたら、春凪が泣きそうな顔で僕を見上げてきた。

「忘れかけて……ました。ごめんなさい」

 大きな目でじっと見上げられて、僕はやっぱり春凪が大好きだと再認識させられる。
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