好みの彼に弱みを握られていますっ!
 なのに自由のきかない身体はそこから目をそらせることさえ億劫なの。

 宗親(むねちか)さんの手、指だけじゃなくて手全体が濡れ光っているように見えるの、気のせいだよね?
 何なら手首を過ぎた辺りまでぐっしょり濡らされているように見えるけど、まだ私、目がチカチカしてるから……きっとそのせいでそう見えているだけに違いないの――。


「ねぇ、春凪(はな)。キミの中に埋めていた僕の手はこんなにグショグショに濡れてるよ? 何より僕の刺激で達けた春凪が、不感症なわけないよね?」

 言って、宗親さんが腕を伝う愛液をペロリと舐め取ってみせたからたまらない。

「ダメッ!」

 悲鳴に似た声を上げて、気怠い身体に鞭打って宗親さんの手を力なく握って彼を見上げたら、「美味しいのに」とか……。

「腹黒ドSモードをこんなところで発揮しなくていいです! 宗親さんのバカぁ!」

 真っ赤になる私を嬉しそうに見下ろしながらクスクス笑うと、宗親さんが「ね、バカな僕だけど……もう春凪の中に挿入ていいかな? そろそろ限界なんだ」とささやいていらして。

 私はパニックのあまりそれが何のことを指しているのか一瞬分からなくてキョトンとしてしまう。
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