好みの彼に弱みを握られていますっ!
「だから……〝参られる〟必要なんて微塵もないと思うんです」

 宗親(むねちか)さんが私に言って下さったように。

「私、どんな宗親さんでも【あ】……、えっと……み、見捨てないでいられる自信がありますっ」

 危うく「愛せる自信がある」と言いそうになって、慌てて別の言葉に置き換えた私は、熱を持った宗親さんの耳にそっと触れた。

 途端宗親さんが一瞬だけ泣きそうな、それでいてどこかホッとした顔をして。
 伸ばしたままの私の手に自分の手を重ねていらした。


 そんな宗親さんを見上げて、私は続けるの。


「宗親さん、私、今すごく幸せな気持ちなんです。だから……えっと……お、OKです。その、……さっきのアレ……」

 そこでゴニョゴニョと口ごもる私に、宗親さんが「さっきのアレ?」って腹黒ドSな笑みを浮かべて。

(もう! 絶対何のことか分かってるくせに! 意地悪!)
 
 そう思いながらも、私は一生懸命頑張った。
 きっと私が自分の意志でゴーサインを出すことは、宗親さんの中で大きな意味を持つんだと思ったから。
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