好みの彼に弱みを握られていますっ!
「昨夜途中で春凪(はな)が気を失ってしまったので一応ある程度は身体、清めてはおいたんですけど……お風呂、入りたいですよね?」

 お湯はためてあります、とふわりと布団の上から優しく撫でられて、私はドキドキしてしまう。

 身体を重ねたからでしょうか?
 今日の宗親(むねちか)さん、やけに甘くないですか?
 気のせいですか?

「む、ねちかさんは――」

 もう入られたのですか?って続けようとしたら「僕もまだです。――心地よいキミの温もりから離れがたくて」って……私が言いたいこと、分かっちゃうとか凄いですし、ちょいちょい甘い言葉を挟んでいらっしゃるから恥ずかしくてとろけそうです!

「一緒に――」
「入りません!」

 いくら何でもまだそんな恥ずかしいこと無理ですっ。

 先んじて宗親さんの言葉を被せるようにして封じたら、「何で僕の言おうとしたこと、分かっちゃうかな?」って嬉しそうに微笑まれた。

 布団の隙間からその笑顔を盗み見て、 

(くぅーっ。宗親さん! ここでその〝腹黒くない〟笑顔は反則です!)

私は密かに悶えた。
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