好みの彼に弱みを握られていますっ!
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 結果、そのお店で婚約指輪のみではなく、結婚指輪までもが私のお給料の【5ヶ月分】は優にポーンと飛んでいきそうなお値段のものを選ぼうとする宗親(むねちか)さんに、私は涙目で「後生ですっ! もっとランクを落としてください! 恐縮して指が腫れてしまいそうですっ」と懇願する羽目になりました。

 だってだって! 普段使いにもなるであろう結婚指輪が【百万円近くする】とか、狂気の沙汰としか思えなかったんですもの!

 そんなだったので、婚約指輪も軽く7桁超え半ばのを選ぼうとなさって。

 私は丁重に、一般的な相場との擦り合わせ作業をさせて頂いたの。


 もちろん、お家柄というのもあるでしょうし、そこはある程度考慮して、私の思いだけを全部押し付けることは出来ないとも思って。

 結婚指輪が三十万、婚約指輪がその倍の六十万円を超えないことを目安に選びましょう?と提案したのだけれど。


 昨今のそれらの相場が、結婚指輪だと大体二十万円以内(正直十万円以内でも素敵なのが沢山あるから、本音言うと私はそこのゾーンをゴリ押ししたいくらい!)、婚約指輪だと三十万円前後なことを思うと、これでもかなり高いと思うの。

 なのに宗親さんはこれに関しては「〝織田家(おりたけ)としての格式〟も組み込まないといけませんから」と渋る素振りをなさって。

 結局、「春凪(はな)には申し訳ないですけど、結婚指輪が五十、婚約指輪が百以上が【最低ライン】として譲れない線ですね」と私の譲歩額を更に引き上げていらした。


 実際葉月さん紹介の宝石店ともなれば、その嫡男(ちゃくなん)である宗親さんが、あまりにもお安いものを選んだのでは示しがつかないのかも知れない。


 そんなこんなで、今現在私の左手薬指にはまっている【入籍後の順番めちゃくちゃ婚約指輪】は、用途通りの役目は果たしていないくせに150万円近くもするもので……付けているだけで手が腫れてしまいそうで。

 一体いつまでこれをつけていないといけないんですか?と宗親さんにお聞きしたら、彼ってば意味深に微笑むだけで何にも指示してくれないの……。

 宗親さん、貴方は一体何を考えていらっしゃるのですか?
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