好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 今日はお昼前、たまたま宗親(むねちか)さんから少し離れて九階の資料室に必要な書類を探しに行ったら、偶然顔見知りに出会ってしまったからたまらない。


「あっ、柴田さんじゃん」

 同じフロアにあるリラクゼーションルームから出てきたばかりと(おぼ)しき同期の足利(あしかが)玄武(げんぶ)くんに呼び止められてしまった。

「あ、足利くん!と――えーっと……」

 作業服姿の足利くんと一緒にいるスーツ姿の彼は、確か同じく同期の――。

 名前が思い出せなくて、胸元の名札を見てやろうとぐっと眉間にしわを寄せて目を(すが)めたら、その人からめちゃくちゃ不機嫌な顔で睨みつけられてしまった。

 やだっ、怖いっ!

 そもそも私、元々同年代の男性が苦手なのに、そんな冷たい目で見下ろされたら物凄ぉーく萎縮してしまうんですがっ!

 思わずキュッと縮こまった私に、足利くんが「ほら~。北条(ほうじょう)が怖い顔すっから柴田さんおびえちゃったじゃん」と間に入ってくれる。

 そうだ。
 思い出した!
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