好みの彼に弱みを握られていますっ!
 私はふたりのやり取りに圧倒されて、思わず二歩・三歩と後ずさってしまっていた。

 あーん、やっぱり同年代の男の子、怖い!


「あ、ごめんね。柴田さん。俺ら結構つるんでっからいつもこんなんよ。引かんで?」

 その気配を目ざとく察知すると、足利くんがズイッと距離を削ってきて。
 私はあっという間に壁際に追い詰められる。

「書類重そうじゃん? 持とうか?」

 言われて足利くんに手を差し出されたけれど、私はふるふると首を振って辞退申し上げた。

「上司に頼まれてる大切な書類ですので」

 人様の手に渡すわけには――。

 実際は別に大した書類ではないんだけど、宗親(むねちか)さんから頼まれたのは私だと思うと、何となく意地を張りたくなった。

「そっか、了解」

 全然気分を害した感じもなくそう言ってくれる足利くんにホッとしたのも束の間。


「――結婚すんの?」

 今まで黙って私と足利くんのやり取りを眺めていた北条くんが、いきなり口を開いてドキッとしてしまった。

 しかも内容がそれ。
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