好みの彼に弱みを握られていますっ!
 手がフリーのときはなるべく身体の影になるようにして隠していた指輪なのに、今はたまたま両手で書類を持っていて隠し損ねてしまっていた。

 それを、北条くんに見咎(みとが)められたらしい。

「あ、あのっ、えっと……その、こ、婚約をしたと申しますか……何というか」

 実際には入籍まで済ませているのに今更「婚約しました」というのは何だかはばかられて。
 でも指にはまっているのが〝婚約指輪〟な以上、そう伝えるのが一番しっくりくるし説明が面倒くさくない、よ、ね?とも思ってしまう。


「婚約!? ――って……え!? ちょ、嘘だろ? この前恋人いないって……。あー、婚約者はいるけどってやつだったか。はぁー、マジかぁー。地味にショックだわぁー」
 
 私の言葉を額面通りに受け取って驚いてくれる素直な足利くんに対して、――北条くん!

「何というかって何だ? したのか、してないのかはっきりしてくれないか? 曖昧な物言いをされるのはすごくイライラするんだが」

 えええ!? そこ突っ込んできます?
 やっぱり私、北条くん(このひと)苦手です!
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