好みの彼に弱みを握られていますっ!
「なっ、何でそんなこと気にするんですか……? 北条(ほうじょう)くんには関係ないですよね?」

 百歩譲って興味本位だとして、そんなの要らないお世話だよ?

 問い掛けておきながら、この場から一刻も早く逃げ出したい私は、資料を片手に持ち変えてエレベーターの呼び出しボタンを押した。

 箱は下の方にあるみたいで、上がってくるのに少し時間を要しそうで。


 北条くんの物言いにムカッとして思わず言い返してはみたものの、慣れないことに鼻の奥がツンとして視界がじんわりぼやけてきてしまった。

(あーん、私のバカ!)

 自分から突っ込んでおいて泣きべそをかいてしまったのを見られたくなかった私は、なかなか上がってこないエレベーターに心の中で密かに溜め息を落とす。


 そんな私に、「キミは本当にバカなのか? 祝いのことが絡んでくるからに決まっているだろう!」と北条くんが腹立たしげに返してきて。

 私は彼からの意外な言葉に思わず「え?」と声を漏らしていた。
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