好みの彼に弱みを握られていますっ!
春凪(はな)。そんなに一気に煽ったら酔い潰れてしまいますよ?」

 明日も仕事なのに――。

 そう付け加える宗親(むねちか)さんを横目に、心の中で「だってだって……」と言い訳をする。

 好みの男性が、お互いの吐息や体温さえも感じられるようなすぐ近くで飲んでおられるんですよ?

 しかもその人と私、昨夜はあんなことやこんなことを……ゴニョゴニョ。


 そんなことを考えたら、とてもシラフのままではいられないんですものっ。


「あ、あのっ。最近あまりお酒を飲む機会に恵まれていなかったので、その、つ、ついお酒が進んじゃうといいますか……」

 えへへ。

 とか笑いながらも、ビールの味はもちろんのこと、大好きなはずのチーズの味さえ殆ど感じられないとか。……もぉ、もぉ、もぉ!


「久々なら尚更。もっとゆっくりとしたペースで飲むべきだと思うんですけどね? だいたい春凪(はな)はお酒の飲み方が下手なんです。僕がMisoka(ミソカ)で初めてキミに声をかけた時だって……」


 至極もっともなことを仰いながら、説教モードに移行していく宗親さんに、私は「うー」と小さくうなって抗議の気持ちを表す。
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