好みの彼に弱みを握られていますっ!
「いっ、家でまで上司みたい喋り方しないでくださいっ」

 照れ隠し。宗親(むねちか)さんを恨めしげに睨んだら、彼は一瞬驚いたように私を見つめてから、すぐさまクスッと笑って。

 その笑顔は紛れもなく例の腹黒スマイルだったから、私は嫌な予感に身体をギュッと硬くした。


「それもそうですね。では、春凪(はな)のご提案通り、〝溺愛夫モード〟に切り替えましょうか」

 ククッと喉の奥で楽しそうに笑うと、宗親さんが私の手からグラスを奪い取る。

「あっ、それ、まだっ――」

 中身残ってます!って言おうと開いた口を、宗親さんのビールでひんやり冷えた唇で塞がれてしまう。

 口中を掻き回す舌先に、すぐさま下腹部がキュンと疼いたのは、昨日の今日だから――?


「ふぁ、っ」

 キスの合間、たまらず喘ぐように息継ぎをした私を満足そうに見下ろして、「春凪(はな)、キミは本当に可愛いね。こんな綺麗で愛らしい奥さんをもらえて、僕は幸せ者です」とか。

 さっき、【そういうモード】に切り替えるっておっしゃってたし、本心じゃないのは十分すぎるほど分かってるのに、馬鹿な私はついついほだされそうになってしまう。

「宗親さ……」

 意識がトロンととろけて、もっともっとキスして欲しいと願ってしまうのは、お酒を飲みすぎたせいですか?

 それとも宗親さんのキスが、すっごくすっごくエッチだったから?


「ねぇ春凪(はな)。今日もキミを抱いていい?」

 瞳の奥に宿した熱を見透かしたように聞かれて、私はうっとりとうなずいた。
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