好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 アイランドキッチン前に置かれた椅子に下ろされた私は、宗親(むねちか)さんが目の前に並べて下さったプレートに目を輝かせる。

 イングリッシュマフィンの上に乗っかっているのは、少し焦げ目を付かせてとろけさせたチーズを纏った、厚切りトマトと目玉焼き。

 リビングに入ってすぐ香ってきた香ばしい匂いの正体は、プロセスチーズが焼けた香りだったみたい。

 愛用のナマケモノマグに注がれた、ミルクたっぷりの熱々カフェオレがその横に添えられる。

 宗親さんは先にご飯を済まされたのか、いつか私も使ったことのある、例のスタイリッシュな透明コーヒーカップにブラックコーヒーを注いで、キッチン越しに私を真っ直ぐ見つめてきて。


春凪(はな)の大好きなチーズも入れましたし、きっと美味しく食べられると思いますよ」

 言われて、私は宗親さんが敢えてチーズを使った朝食で、私を甘やかして下さったんだと悟った。

「あ、有難うございます」

 何だかすごく大切にされているみたいで、照れ臭さに宗親さんの顔が見られなくなった私は、プレートの上にばかり目線を彷徨(さまよ)わせてしまう。

 ソワソワしながら「いただきます」をして、マフィンの端っこをチミッと齧る。

 途端チーズの風味が鼻の奥に抜けて、思わず笑みがこぼれた。

「美味しいです」

 言いながらマグカップを手にとって、中身をひとくち口に含んだ。
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