好みの彼に弱みを握られていますっ!
 とろりと甘くて、ほんちょっとだけコーヒーフレーバーのする温かな液体が、ふわりと鼻腔をくすぐって喉を滑り落ちていく。

「あ、これ……」

「気づきましたか? 生クリーム入りです」

 私の反応に満足そうに微笑むと、宗親(むねちか)さんが「春凪(はな)の好きなRed Roofのカフェラテに少し寄せてみました」とおっしゃって。


 宗親さんが淹れて下さった特性のカフェオレは、砂糖こそ入っていないけれど、濃厚な生クリーム仕立てだからか、ほんのり甘いの。

 ホワホワとしたお味が、のほほんとしたナマケモノマグカップに入れるのに、ぴったりな飲み物に思えた。


 対する宗親さんは、スタイリッシュな透明カップにブラックコーヒー。

 ゴツゴツと骨張っていて男らしい印象なのに、同時に繊細にも見える宗親さんの美しくて長い手指が、持ち手まで透明なカップに伸びる様はどこか凛としていてとても様になっていて。

「宗親さんにはやっぱりそのカップとブラックコーヒーが似合いますね」

 思ったままをほぅっと吐息混じりに言ったら、「ですが僕は春凪とお揃いのカップを使いたいなと思っています」とかどういう意味ですか?
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