好みの彼に弱みを握られていますっ!
***
「おい、柴田春凪。お前本当に大丈夫か?」
「嫌らなぁ〜。大丈夫れすよぉーっ」
こすりすぎた目元がヒリヒリするけれど、平気。
Vサインをしてみせたら床に放置していたスマートフォンがチカチカと光っているのが見えた。
音もバイブもオフにしているけれど、着信通知のランプだけは生きているみたい。
家を出た時、手にしていたのはスマートフォンだけ。
お財布すら持って出ていなかった無一文の私は、服と一緒にほたるから渡された、お金入りのお財布一体型ポーチの中に、それをギューギュー押し込んだ。
途端、北条くんが私の耳元に唇を寄せて、私にだけ聞こえる小声で
「なぁ、〝織田課長〟に連絡しなくて良いのか……? 意地張って、後悔しても知らんぞ?」
とささやき掛けてきて。
私はびっくりして瞳を見開いてしまう。
「な……んれしょれを……」
(何でそれを)
相手が織田課長だなんて、私、一言も話してない……よ?
「宗親なんて変わった名前、そうそうないからな」
言われて、私、無意識に彼の名前を出していたんだと今更のように気付かされた。
「まぁ、俺しか気付いてなさそうだから安心しろ」
向こうのほうで武田くんを起こそうと揺すっている足利くんにチラリと視線を流すと、北条くんが小さくフッと笑って。
この人、本当すごいなぁ、敵にはしたくないぞーって、ぼんやりした頭でふわふわと思った。
「おい、柴田春凪。お前本当に大丈夫か?」
「嫌らなぁ〜。大丈夫れすよぉーっ」
こすりすぎた目元がヒリヒリするけれど、平気。
Vサインをしてみせたら床に放置していたスマートフォンがチカチカと光っているのが見えた。
音もバイブもオフにしているけれど、着信通知のランプだけは生きているみたい。
家を出た時、手にしていたのはスマートフォンだけ。
お財布すら持って出ていなかった無一文の私は、服と一緒にほたるから渡された、お金入りのお財布一体型ポーチの中に、それをギューギュー押し込んだ。
途端、北条くんが私の耳元に唇を寄せて、私にだけ聞こえる小声で
「なぁ、〝織田課長〟に連絡しなくて良いのか……? 意地張って、後悔しても知らんぞ?」
とささやき掛けてきて。
私はびっくりして瞳を見開いてしまう。
「な……んれしょれを……」
(何でそれを)
相手が織田課長だなんて、私、一言も話してない……よ?
「宗親なんて変わった名前、そうそうないからな」
言われて、私、無意識に彼の名前を出していたんだと今更のように気付かされた。
「まぁ、俺しか気付いてなさそうだから安心しろ」
向こうのほうで武田くんを起こそうと揺すっている足利くんにチラリと視線を流すと、北条くんが小さくフッと笑って。
この人、本当すごいなぁ、敵にはしたくないぞーって、ぼんやりした頭でふわふわと思った。