好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 結局ほたるには電話だけではなく、直接会いに行くことになってしまった。

 宗親(むねちか)さんが、「春凪(はな)がお世話になったのですから」と譲ってくれなくて。

 押し問答の末、半ば押し切られる形で彼と訪問することになったとほたるに連絡する羽目になったのだけれど。

「夜ですし、春凪(はな)だけだと思って応対したのに僕が居たら驚かれるかも知れないでしょう?」

 主に、ほたるの服装などの面で心配してくださっているみたい。

「しょれならっ、訪問自体を(ひきゃ)えたらいいんれしゅよ」

 言ったら、「お金もお借りしているようですし、そういうわけにはいきません」って意味が分かりません。

 彼が一緒だと伝えたら、ほたるはとても慌てていたけれど、反面私の〝婚約者〟に興味も持ったみたいで。

『お願い。三十九分ちょーだい!』

 と勢いよく電話を切ってしまった。


 ちょと待って、ほたるっ。
 何故にそんな中途半端な数値指定っ⁉︎

「……だそうれしゅ」

 スピーカー通話にしていたわけではないけれど、しっかり外に漏れ聞こえてしまったほたるの声に苦笑しながら宗親(むねちか)さんを見つめたら、
「了解です」
 言って、彼は上機嫌で車を発進させて。

「お友達の支度が整うまで軽くデートしましょう」

 とか。

 何だかよく分かんないですけど、宗親さんは私に好きだと言って下さって(まだ信じられないですが!)からキャラ変なさった気がします。


 車を走らせながら、婚姻届未提出の理由について話してくださるのかと思っていたら、それは私の酔いがちゃんと覚めてから、と言われてしまった。

 口調こそ微妙だけど、「頭は結構ハッキリしてりゅんれしゅよ」と一生懸命説明してみたけれど、口調がマズイのがダメなんだとか。

 もぉー! わけ分かんないっ!
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