好みの彼に弱みを握られていますっ!
「しょ、しょれはそうなんれすけどぉ〜」

 そもそも、そうなった原因を作ったのは貴方じゃないですか!と言いたい気持ちをグッと堪えた。

 そこで出かける前に作ったアレコレのことを思い出した私は、宗親さんの冷たい視線から逃れるように「しょう言えば(しゃば)味噌(みしょ)煮込み定食(てぇしょきゅ)、美味しかったれしゅか?」と問いかける。

 あれを作っていた時にはまだ健全な精神状態だった。

 だから卒なく作れていたはずなの。

 そこで車が停まって、宗親さんが「降りますよ」って言うから、私は〝お味の感想は〜?〟と思いながらも、渋々シートベルトに手を伸ばす。

 さっさと車から降りてしまった宗親さんに焦りつつ、一生懸命金具を外そうとしたんだけど、あれ、おかしいな?

 外れないよ?

「あれれれ?」

 なんて言ってたら助手席側のドアが開いて、宗親さんが「何してるんですか? ベルトが外せないの?」と私の上に覆い被さってきて。

 カチカチと無駄な動きを繰り返していた手ごと、宗親さんの大きな手でふわりと包み込まれてしまう。

「ひゃわわっ」

 それにびっくりして思わず真っ赤になって変な声を出したら「春凪(はな)、ホント可愛い」ってつぶやかれた。

 わーんっ! 甘々宗親さん、慣れないので怖いですっ!
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