好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

春凪(はな)、キミを捕まえたときからずっと気になっていたんですけどね……」

 家に帰って玄関扉が閉まるなり、宗親(むねちか)さんがそうつぶやいて。

 私の左手をギュッと握って口付けてくる。

「ひゃっ」

 いきなりそんなことをされるとは思っていなかった私は、思わず手を引っ込めようとして。
 思いのほか強く絡められた宗親さんの手指にそれを阻まれる。

「あ、あのっ」

 足利(あしかが)くんの(マンション)の前で立ち話をして。Misoka(ミソカ)に行って。ほたるの家に寄って。

 さすがにもうすっかり酔いも覚めてきた私は、言葉遣いもほとんどマトモに戻っていた。

「い、いきなり何ですかっ? 宗親さっ、家に帰ったら嘘ついた理由、教えてくださるんじゃな《《きゃ》》ったんですか?」

 あっ。
 い、今の「きゃ」は舌を噛んじゃっただけで、別に呂律(ろれつ)が回らなくて、とかじゃありませんっ!
 信じてくださいっ!

 手を離してもらえないことに不安を覚えながら問いかけたら、宗親さんが小さく吐息を落として。

「とりあえずリビングに行きましょうか」

 って、それ、私のセリフですからね⁉︎
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