好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 宗親(むねちか)さんのために作った「サバの味噌煮込み定食」を、プレートごと電子レンジに放り込んでスタートボタンを押すと、私はお味噌汁に火を入れて、ついでなので生姜(しょうが)をほんの少し千切りする。
 出がけに、私が家にいたらやるんだけどな?と思った、サバの味噌煮込みの上に載せる飾り用だ。


「飲み物は玄米茶でいいですよね?」

 ヤカンを火にかけながらそう問いかけたら、

春凪(はな)が出してくれるものなら僕は何だって大歓迎です」

 カウンターの向こう側に腰掛けた宗親さんにニコッと微笑まれて、私はビクッと肩を震わせた。

 もぉっ!
 良い加減その甘々なアレコレ、やめてくださいよぅ。
 本当落ち着かないんですっ!

 そう思ったけれど、もしかしたら今後はずっと、一事が万事こうなのかも?と一抹の不安が脳裏を()ぎる。

 これじゃ、宗親さんにピッタリだと選んだこのマグが、【らしくない】感じになってしまうではないですかっ。

 使う前に一回洗おうと流しに置いたマグを手洗いしながら、私は小さく吐息を落とした。
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