好みの彼に弱みを握られていますっ!
「バカだなぁ〜。春凪(はな)はハムスターみたいにチョコマカしてて見ていて飽きないじゃない? それなのに時々びっくりするぐらい〝女〟だなぁって表情(かお)するのよ? そこがすっごくギャップ萌えなの。――気付いてないの?」

 前半はともかく後半は半信半疑です。

 色気が服を着て歩いているようなほたるの言葉に、私はソワソワと落ち着かない。

「ちょっとつつくとそんな風に目を白黒させて慌てるところとか……放っておけないって思っちゃうんだけどな? ほら、春凪の婚約者の彼だってきっと、春凪のそう言うところに《《やられ》》ちゃったんじゃない?」

「や、やられ……っ⁉︎」

(わ、私はアサシンか何かですか⁉︎)

 照れを誤魔化すため、茶化すみたいに思ったけれど、ちゃんと分かってる。それが「()られる」じゃないことぐらい。

「わ、私にとってはほたるの方がっ」

 オロオロしながら話の矛先を変えようと頑張る私に、「だって私も恋してるから」って、ほたるがこともなげに言うの。

「恋? ……ってさっきの?」
「うん」

 さらりと(うなず)かれて、私はドキドキしてしまう。

「ね、その人ってどんな人?」

 ほたる、こんなに綺麗なのに在学中から浮いた話が一度もなかったから凄く気になってしまった。

「う〜ん。大人の男性……かな。私達より大分年上だと思うし」

 言ってほぅっと溜め息をつくと、ほたるが私をじっと見つめてくる。

「ねぇ春凪(はな)。年上の彼氏ってやっぱり同年代と違って大人?」

 その〝同年代〟が誰を指しているのか分からない私じゃない。

 あの、私をさんざんこき下ろした最悪男(元カレ)のことだ。

「うん。すっごくすっごく大人っ、だと思う……」

 私が長年抱えてきた陥没乳首(コンプレックス)をいとも簡単に絡め取って「そんなところも含めて自分のこと、好きかも」って思わせてくださる程度には大人です。

 時々恥ずかしくなるぐらい子供っぽいところもあるけれどっ。

「それに……私がコンプレックスだと思っていたことを好きになってもいいかもって思わせてくれる……すごい人……かも」

「そっか〜。康平(こうへい)とは大違いじゃん! アイツ最低だったもんね。――いいなぁ、やっぱり。私ね、こう見えてもその人にもう三年くらい片想いしてるの」
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