好みの彼に弱みを握られていますっ!
「三年も……⁉︎」

 私たちは今年の誕生日で二三になったところ。

 背が低くて童顔だから幼く見られがちだけど、四月二十日(はつか)生まれの私は、同学年のみんなよりいち早く歳を重ねる。

 二十歳(はたち)になった大学二年生の時は、夏生まれのほたるより先に成人したことが嬉しくて、「私、ほたるより先にお酒が解禁になっちゃったよぉー!」と、やたらはしゃいだっけ。

 そのくせ、結局ほたるが自分の年齢に追いついた七月二八日に、前から行ってみたいと二人で目星を付けていたバー『Misoka(ミソカ)』へ行くまで、お酒デビューはお預けにしていた私だ。


「ほたるの二十歳(はたち)のお祝い、すっごく楽しかったよねー♥」

 生まれて初めて飲むお酒にほろ酔い気分になった私が、明智さん(マスター)に「今日は友人の誕生日なんですぅ〜。二人で初めてバーデビューを果たしましたぁーっ!」と話したら、「何歳になったの?」って聞かれて。

「そうそう。春凪(はな)の言葉を聞いたマスターが、サプライズでケーキを用意してくれて……すっごく驚かされたよね」

 私の言葉に、ほたるが凄く《《可愛い》》顔をしてふんわり笑う。

 あの時のケーキ、マスターからのプレゼントってことで無料(タダ)だったっけ。

 マスターの、「これからも是非『Misoka(ミソカ)』を贔屓(ひいき)にしてね」ってウインクと、大人の魅力バリバリの笑顔にほだされて、私とほたるは《《まんまと》》Misoka(ミソカ)の常連客になったの。


「あれからもう三年かぁ〜」

 ほうっと溜め息混じりにこぼしたら「うん、三年だね」ってほたるがしみじみとつぶやいた。

(そっか、そっか。三年かぁ〜)

 ふわりと頭の中でそこまで考えて、私は(ん⁉︎ もしかして)と思って。


「ねぇ、ほたる。違ってたらごめんね」

 一応そう断りを入れて、恐る恐る聞いてみた。

「もしかして三年くらい片想いしてるほたるの好きな人って……。えっと、その……Misoka(ミソカ)のオーナーさんだったり……する?」

 嘘の三八(サンパチ)って言葉があるけれど、この《《三》》年はそういうのじゃない気がする。

 私は手元のカフェラテをゴクッと飲み込むのと一緒に、生唾を飲み込んだ。

「……うん」

 存外何でもないことみたいにあっさり認められて、私は瞳を見開いた。

 だから、私が宗親(むねちか)さんとのことでバタバタしていて行けなかった間も、ほたるは〝私を探す〟という大義名分でMisoka(ミソカ)に顔を出してたんだって今更のように気が付いた。

 もちろん、私のことを気にしてくれたって言葉は嘘じゃないと思う。

 だけど、そのためだけならもっと別のところ――例えば私の勤め先とか――に顔を出す方が効率がいいはずだもん。
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