好みの彼に弱みを握られていますっ!
そもそもそれは宗親さんと出会う前の柴田家の話。
今の柴田はそんなじゃないのに。
「康平、色々思い違いしてる」
キッと彼を睨み付けながら、怒りに任せて康平を壁にギュッと押し付けたら、「春凪、ちょっと会わないうちに大胆になったな」ってクスクスと笑われて、そのまま康平に抱きすくめられてしまう。
「イヤッ! 離して!」
「俺に先に密着してきたの、春凪の方だろ? ――それにしてもお前、いい匂いだな」
言葉と同時、頭に鼻先を押し当てられて、髪の毛の匂いを嗅がれる気配がして、全身が怖気立った。
「この指輪はさ、俺が売って俺たちの門出の資金にしてやるから……年の離れたオッサンなんかとはさっさと別れて俺と結婚しようぜ? な?」
康平は完全におかしくなっている。
そう思うのに、私を捕まえる彼の腕から逃れる術が見つけられなくて。
それでも私は必死に身体をよじって康平の拘束から逃れようと抗った。
「なぁ春凪。俺、お前と別れた時に潔くお前の番号消しちまってっからさ。今お前に逃げられたら連絡取れなくなっちまうんだよ」
まるで「逃がさない」と言われているみたいに腕の力を更に強められた私は、痛みに思わず眉根を寄せて。
「また毎日のようにMisoka前でいつ来るか分かりもしねぇお前を待ち伏せすんの、もう飽き飽きなんだわ」
勝手なことを言う康平のぼやきを聞きながら、心の中では彼が私の連絡先を消してくれていて良かったと心底ホッとした。
私も康平と別れた後、情けなくて悔しくて悲しくて……。
ほたるに「そんなサイテー男の番号なんてさっさと消しちゃえ」って勧められてMisokaで飲んだ時、ほたるの目の前で康平の番号を連絡先から抹消してある。
だけど自分の番号は変えたりはしていなかったから。
康平が、フった私のデータを潔く?削除してくれていて良かった!と思いながら、どうせならずっと潔いままでいてくれたら良かったのに!と至極当たり前のことを思った。
「坂本さんはお前と違ってしょっちゅうここに来てるけどさ。彼女に聞いても全然教えてくんねぇんだわ。だから――」
そこまで言うと、康平が私の耳に唇を寄せて囁くの。
「手ぇ離して欲しかったら連絡先教えろよ、春凪」
付き合っていた頃は大好きだったはずの康平の声が、今はただただ嫌悪の対象でしかない。
今の柴田はそんなじゃないのに。
「康平、色々思い違いしてる」
キッと彼を睨み付けながら、怒りに任せて康平を壁にギュッと押し付けたら、「春凪、ちょっと会わないうちに大胆になったな」ってクスクスと笑われて、そのまま康平に抱きすくめられてしまう。
「イヤッ! 離して!」
「俺に先に密着してきたの、春凪の方だろ? ――それにしてもお前、いい匂いだな」
言葉と同時、頭に鼻先を押し当てられて、髪の毛の匂いを嗅がれる気配がして、全身が怖気立った。
「この指輪はさ、俺が売って俺たちの門出の資金にしてやるから……年の離れたオッサンなんかとはさっさと別れて俺と結婚しようぜ? な?」
康平は完全におかしくなっている。
そう思うのに、私を捕まえる彼の腕から逃れる術が見つけられなくて。
それでも私は必死に身体をよじって康平の拘束から逃れようと抗った。
「なぁ春凪。俺、お前と別れた時に潔くお前の番号消しちまってっからさ。今お前に逃げられたら連絡取れなくなっちまうんだよ」
まるで「逃がさない」と言われているみたいに腕の力を更に強められた私は、痛みに思わず眉根を寄せて。
「また毎日のようにMisoka前でいつ来るか分かりもしねぇお前を待ち伏せすんの、もう飽き飽きなんだわ」
勝手なことを言う康平のぼやきを聞きながら、心の中では彼が私の連絡先を消してくれていて良かったと心底ホッとした。
私も康平と別れた後、情けなくて悔しくて悲しくて……。
ほたるに「そんなサイテー男の番号なんてさっさと消しちゃえ」って勧められてMisokaで飲んだ時、ほたるの目の前で康平の番号を連絡先から抹消してある。
だけど自分の番号は変えたりはしていなかったから。
康平が、フった私のデータを潔く?削除してくれていて良かった!と思いながら、どうせならずっと潔いままでいてくれたら良かったのに!と至極当たり前のことを思った。
「坂本さんはお前と違ってしょっちゅうここに来てるけどさ。彼女に聞いても全然教えてくんねぇんだわ。だから――」
そこまで言うと、康平が私の耳に唇を寄せて囁くの。
「手ぇ離して欲しかったら連絡先教えろよ、春凪」
付き合っていた頃は大好きだったはずの康平の声が、今はただただ嫌悪の対象でしかない。