好みの彼に弱みを握られていますっ!
今すぐにでも宗親さんに「春凪」って呼んでもらって、この寒気がするような不快感を綺麗さっぱり払拭して欲しい。
そんな康平に連絡先なんか教えたくないという意思表示でフルフルと首を横に振ったら、すぐ耳元で康平がチッと舌打ちをして。
「だったら今ここで婚約者んトコに戻れねぇ身体にしてやるけど、それでもいい?」
サラリと恐ろしいことを言って、康平がまるでキスでもしたいみたいに顔を寄せてくる。
私はそんなの絶対に嫌だったから、思いっきり身体を反らせて彼から逃れようともがきながら必死に喚いた。
「嫌ぁっ! 康平! 離して‼︎」
目の前の私から、悲鳴に似た声が口を突いて出ているというのに、一向に怯まない康平に、私は絶望的な気持ちになる。
私はこんな碌でもない男と一年半も交際していたの?
付き合っていた頃のことまで否定したくなんてないのに、過去まで丸っと無かったことにしたくなるような愚行、お願いだからやめて!
必死に抵抗して私を掴んだ康平の腕を引っ掻いたら痛かったのかな。一瞬だけ彼の腕の力が緩んだ。
私はその隙を逃さず、拘束する腕から抜け出すと道のほうに向かって走り出ようとして。
康平に足を引っ掛けられて前のめりにつんのめった。
「きゃっ」
咄嗟に両手を突いて身体を支えたけれど、両膝を盛大に擦りむいてズキッとした痛みが走る。
転んだ拍子に肩にかけていたバッグが飛んで道の方へ滑り出て。乗るあてはない癖にいつも持ち歩いていた真っ赤なハートのチャームキーホールダーが付いた、愛車のキーがカバンから飛び出したのが見えた。
他にも何か出てしまっているかもしれない。
早く立ち上がって拾わないと!って思うのに、膝が痛くて思うように立ち上がれなくてよろめいてしまった。
痛みに負けてモタモタしていた私が悪いのかな。
「春凪、急に引っ掻くとか酷くね?」
グイッと肩に手を掛けられて、私は路地裏で仰向けにひっくり返されてしまった。
私の怪我なんてお構いなし。
血が流れ伝っている膝に一瞥も与えないまま、康平が私を押さえ付けるように馬乗りになってくるから……。
私は「イヤッ!」って拒絶の声を出そうとして、グッと口を片手で塞がれてしまう。
そうして心底面倒臭そうに「騒ぐなよ、うるせぇな」って睨みつけられた。
(騒がれたくないならこんなことしなきゃいいのに!)
そう思うのに、一生懸命もがいてもびくともしない圧倒的な力の差が怖くて、身体が萎縮してしまう。
「お前、さっきからちっとも可愛げがねぇからさ。ここで最後までシちまおうと思うんだけど、異存はねぇよな?」
ニヤリと笑って脅迫まがい。私に指輪を見せつけると、それをポケットに仕舞うついでみたいに携帯を取り出してこちらに向けてくる。
そんな康平に連絡先なんか教えたくないという意思表示でフルフルと首を横に振ったら、すぐ耳元で康平がチッと舌打ちをして。
「だったら今ここで婚約者んトコに戻れねぇ身体にしてやるけど、それでもいい?」
サラリと恐ろしいことを言って、康平がまるでキスでもしたいみたいに顔を寄せてくる。
私はそんなの絶対に嫌だったから、思いっきり身体を反らせて彼から逃れようともがきながら必死に喚いた。
「嫌ぁっ! 康平! 離して‼︎」
目の前の私から、悲鳴に似た声が口を突いて出ているというのに、一向に怯まない康平に、私は絶望的な気持ちになる。
私はこんな碌でもない男と一年半も交際していたの?
付き合っていた頃のことまで否定したくなんてないのに、過去まで丸っと無かったことにしたくなるような愚行、お願いだからやめて!
必死に抵抗して私を掴んだ康平の腕を引っ掻いたら痛かったのかな。一瞬だけ彼の腕の力が緩んだ。
私はその隙を逃さず、拘束する腕から抜け出すと道のほうに向かって走り出ようとして。
康平に足を引っ掛けられて前のめりにつんのめった。
「きゃっ」
咄嗟に両手を突いて身体を支えたけれど、両膝を盛大に擦りむいてズキッとした痛みが走る。
転んだ拍子に肩にかけていたバッグが飛んで道の方へ滑り出て。乗るあてはない癖にいつも持ち歩いていた真っ赤なハートのチャームキーホールダーが付いた、愛車のキーがカバンから飛び出したのが見えた。
他にも何か出てしまっているかもしれない。
早く立ち上がって拾わないと!って思うのに、膝が痛くて思うように立ち上がれなくてよろめいてしまった。
痛みに負けてモタモタしていた私が悪いのかな。
「春凪、急に引っ掻くとか酷くね?」
グイッと肩に手を掛けられて、私は路地裏で仰向けにひっくり返されてしまった。
私の怪我なんてお構いなし。
血が流れ伝っている膝に一瞥も与えないまま、康平が私を押さえ付けるように馬乗りになってくるから……。
私は「イヤッ!」って拒絶の声を出そうとして、グッと口を片手で塞がれてしまう。
そうして心底面倒臭そうに「騒ぐなよ、うるせぇな」って睨みつけられた。
(騒がれたくないならこんなことしなきゃいいのに!)
そう思うのに、一生懸命もがいてもびくともしない圧倒的な力の差が怖くて、身体が萎縮してしまう。
「お前、さっきからちっとも可愛げがねぇからさ。ここで最後までシちまおうと思うんだけど、異存はねぇよな?」
ニヤリと笑って脅迫まがい。私に指輪を見せつけると、それをポケットに仕舞うついでみたいに携帯を取り出してこちらに向けてくる。