好みの彼に弱みを握られていますっ!
〝ボタン、とめないと〟って思うのに、宗親さんの首に回した腕を解くのが。
ううん。彼から手を離してしまうのがすっごく怖くて出来ないの。
きっとそういう優柔不断さが全ての元凶なんだよねって思ったら、胸が締め付けられるように苦しくなった。
***
「いらっしゃいませ。――って、オイ、織田っ、何事だ⁉︎」
宗親さんがドアベルの音を響かせて薄暗い店内に入った時、Misokaに連れて来られたんだって思って。
泣きじゃくってボロボロの顔を明智さんに見られたら、って恥ずかしくなった私は、宗親さんの肩口にしがみつくみたいにぎゅうっと額を押し当てた。
だけど血まみれになった足は隠せなかったみたいで、「ちょっ、柴田さん、怪我してんじゃん!」と慌てる明智さんの声が耳を揺らす。
幸いまだ開店直後で、バーという要素の方が強めなMisokaの店内には、私たち以外のお客さんは来ていなかった。
「裏、借りますよ」
宗親さんは勝手知ったる他人の家さながらにそう告げると、カウンター奥の扉に向かって。
「ああ。別に構わねぇけど……お前事情ぐらい説明……」
言い募ろうとする明智さんに、宗親さんはピシャリと「明智、店の横の路地、防犯カメラぐらい設置しとけよ」と怒気を滲ませる。
***
「ごめ、んなさい……」
バックヤードに入るなり私はギュッと胸元を押さえて、絞り出すように謝罪の言葉を紡いだ。
未だワンピースの前開きボタンはだらしなく開けられたまま。
早く留めたいのに手が震えて上手く出来そうになかったから、私は胸元を息苦しいほどにきつく、締め上げるように押さえ付けた。
「何故春凪が僕に謝るんですか?」
宗親さんはとりあえずといった様子で休憩室に置かれた椅子に私を座らせると、傷口の様子を確認するためだろう。目の前にしゃがみ込んだ。
「やはり綺麗に洗った方が良さそうですね」
ポツンとつぶやくと、宗親さんは休憩室の更に奥にある店外へ続く扉の施錠を開けると、再度私を抱き上げる。
「外に水道があります。そこで傷口を洗い流しましょう」
私は宗親さんにされるがまま。
胸元を押さえる手はそのままに、もう一方の手で彼の首筋にしがみついた。
外は真っ暗だったけれど、不思議と宗親さんと一緒だと怖くなくて。
さっき、この近くの路地であったことを思うとゾクリと身体が震えたけれど、それを察したように宗親さんがずっと私のどこかに触れていて下さるから本当に心強かった。
ううん。彼から手を離してしまうのがすっごく怖くて出来ないの。
きっとそういう優柔不断さが全ての元凶なんだよねって思ったら、胸が締め付けられるように苦しくなった。
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「いらっしゃいませ。――って、オイ、織田っ、何事だ⁉︎」
宗親さんがドアベルの音を響かせて薄暗い店内に入った時、Misokaに連れて来られたんだって思って。
泣きじゃくってボロボロの顔を明智さんに見られたら、って恥ずかしくなった私は、宗親さんの肩口にしがみつくみたいにぎゅうっと額を押し当てた。
だけど血まみれになった足は隠せなかったみたいで、「ちょっ、柴田さん、怪我してんじゃん!」と慌てる明智さんの声が耳を揺らす。
幸いまだ開店直後で、バーという要素の方が強めなMisokaの店内には、私たち以外のお客さんは来ていなかった。
「裏、借りますよ」
宗親さんは勝手知ったる他人の家さながらにそう告げると、カウンター奥の扉に向かって。
「ああ。別に構わねぇけど……お前事情ぐらい説明……」
言い募ろうとする明智さんに、宗親さんはピシャリと「明智、店の横の路地、防犯カメラぐらい設置しとけよ」と怒気を滲ませる。
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「ごめ、んなさい……」
バックヤードに入るなり私はギュッと胸元を押さえて、絞り出すように謝罪の言葉を紡いだ。
未だワンピースの前開きボタンはだらしなく開けられたまま。
早く留めたいのに手が震えて上手く出来そうになかったから、私は胸元を息苦しいほどにきつく、締め上げるように押さえ付けた。
「何故春凪が僕に謝るんですか?」
宗親さんはとりあえずといった様子で休憩室に置かれた椅子に私を座らせると、傷口の様子を確認するためだろう。目の前にしゃがみ込んだ。
「やはり綺麗に洗った方が良さそうですね」
ポツンとつぶやくと、宗親さんは休憩室の更に奥にある店外へ続く扉の施錠を開けると、再度私を抱き上げる。
「外に水道があります。そこで傷口を洗い流しましょう」
私は宗親さんにされるがまま。
胸元を押さえる手はそのままに、もう一方の手で彼の首筋にしがみついた。
外は真っ暗だったけれど、不思議と宗親さんと一緒だと怖くなくて。
さっき、この近くの路地であったことを思うとゾクリと身体が震えたけれど、それを察したように宗親さんがずっと私のどこかに触れていて下さるから本当に心強かった。