好みの彼に弱みを握られていますっ!
宗親さんの言葉に思わずホロッときて視界がにじみ掛けた私は、慌てて彼から視線を逸らせる。
それでも私のために宗親さんが色々気遣ってくださっているんだと、切なくなるくらい伝わってくるから。
堪らなく嬉しくて、胸がキュッと締め付けられる。
「……あ、りがとぉ、ございます」
それだけはどうしても伝えなきゃいけないと思って、うつむいたまま震える声を必死に抑えながらお礼を言ったら、頭にふんわりと軽いキスを落とされる気配がした。
***
「だ、大丈夫です。ちゃんと歩けます」
タクシーで家に帰り着いて、車から降りるなり、また私を抱き上げてくれようとする宗親さんに、私はフルフルと首を振って自分の足で立った。
足の曲げ伸ばしで少しピリッとした痛みは走るけれど、両膝を擦り剥いたくらいで、いつまでもお姫様抱っこは恥ずかしい。
大体、経緯がショックだっただけで、怪我自体はそんなに大したものではないのだ。
それこそ子供の頃にはしょっちゅうやっちゃったような……その程度の擦過瘡。
それに、このマンションには二四時間体制でコンシェルジュがいるんだもの。
家を出るたびに顔を合わせないといけないその人たちに、お姫様抱っこで登場!なんて、結婚式さながらのパフォーマンスは見せられないじゃない。
そんなことを思いながら、すぐそばの宗親さんの様子を窺うように見上げたら、何だかすごく寂しそうな顔をした彼と目が合ってしまった。
途端、何とも言えない罪悪感に包まれた私は、ちょっとだけ考えて、「でも……腕は貸して頂けたら……嬉しい……です」と小声で付け足してみる。
宗親さんは「お安い御用です」と即座に応えると、私の手を半ば強引に自分の腕に引き寄せた。
「僕に全体重預けてもらって構いませんからね?」
その声にふと顔を上げた先。
宗親さんからこれ以上ないと言うくらいの優しい笑顔を向けられて、私は胸元を掴んだままの手にギュッと力を込めて、思わず彼から視線を逸らした。
宗親さんにこんな表情を向けてもらえる資格が、今の私にはない気がして。
一刻も早く、康平に触れられたおぞましい感触を、熱いシャワーで洗い流したい――。
それでも私のために宗親さんが色々気遣ってくださっているんだと、切なくなるくらい伝わってくるから。
堪らなく嬉しくて、胸がキュッと締め付けられる。
「……あ、りがとぉ、ございます」
それだけはどうしても伝えなきゃいけないと思って、うつむいたまま震える声を必死に抑えながらお礼を言ったら、頭にふんわりと軽いキスを落とされる気配がした。
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「だ、大丈夫です。ちゃんと歩けます」
タクシーで家に帰り着いて、車から降りるなり、また私を抱き上げてくれようとする宗親さんに、私はフルフルと首を振って自分の足で立った。
足の曲げ伸ばしで少しピリッとした痛みは走るけれど、両膝を擦り剥いたくらいで、いつまでもお姫様抱っこは恥ずかしい。
大体、経緯がショックだっただけで、怪我自体はそんなに大したものではないのだ。
それこそ子供の頃にはしょっちゅうやっちゃったような……その程度の擦過瘡。
それに、このマンションには二四時間体制でコンシェルジュがいるんだもの。
家を出るたびに顔を合わせないといけないその人たちに、お姫様抱っこで登場!なんて、結婚式さながらのパフォーマンスは見せられないじゃない。
そんなことを思いながら、すぐそばの宗親さんの様子を窺うように見上げたら、何だかすごく寂しそうな顔をした彼と目が合ってしまった。
途端、何とも言えない罪悪感に包まれた私は、ちょっとだけ考えて、「でも……腕は貸して頂けたら……嬉しい……です」と小声で付け足してみる。
宗親さんは「お安い御用です」と即座に応えると、私の手を半ば強引に自分の腕に引き寄せた。
「僕に全体重預けてもらって構いませんからね?」
その声にふと顔を上げた先。
宗親さんからこれ以上ないと言うくらいの優しい笑顔を向けられて、私は胸元を掴んだままの手にギュッと力を込めて、思わず彼から視線を逸らした。
宗親さんにこんな表情を向けてもらえる資格が、今の私にはない気がして。
一刻も早く、康平に触れられたおぞましい感触を、熱いシャワーで洗い流したい――。