好みの彼に弱みを握られていますっ!
「わぁ~。さすが明智さん! 私も絶対そっちの方がいいと思いますっ! やだ、めっちゃ嬉しい♥ ホント有難うございます!」
私がそう言った途端、宗親さんから無言のままに発せられた、〝明智、うちの嫁に餌付けしないでくれる?〟という恨めし気なオーラをひしひしと感じつつ、私は大好きなチーズの誘惑にあっさりと陥落する。
ほたるが明智さんに作ってもらったワインレモネードに合うというカプレーゼも、トマトのスライスの上にモッツァレラチーズとバジルが乗っかっていて、すっごく美味しそうで。
タラリと掛けられたエキストラバージンオリーブオイルと、パラパラまぶされた塩コショウの香りがふわりと鼻腔をくすぐった。
(モッツァレラチーズ♥)
声に出したわけではないけれど、表情に物欲しさが滲み出ていたみたい。
「もちろんこれも食べていいよ?」
ほたるからそう畳み掛けられては、宗親さんの了承の言葉を聞く前でも移動を決意せざるを得ないじゃないの。
「きゃー、ほたる、有難う! じゃ、あっち行こっ?」
チーズに誘われるように宗親さんのそばを離れたと同時、背後で彼が私を呼び止める声がしたけれど、鼻先に大好物をぶら下げられた私の耳は意図的にその声をシャットアウトした。
(宗親さん、ごめんなさいっ)
***
「――実はね、そろそろ統和さんの誕生日なの」
ボックス席に移動するなり背後の明智さんをチラチラと気にしながら、ほたるがそう囁いて。
私もつられて小声で「いつ?」と聞き返していた。
「この三十日。ね、知ってた? ここの店名がMisokaなのは統和さんが晦日生まれだかららしいの」
「えっ、そうだったの⁉︎」
初めて聞くこの店の名付けの由来に(なるほどぉー)と思ったと同時、(もし明智さんがもう一日遅く生まれていらしたら、店名は『Oh! Misoka』とかだったりしたのかしら?)とかどうでもいいことを思って、心の中で一人笑ってしまう。
「春凪、いま変なこと考えてたでしょ?」
「えっ」
顔に出してニマニマしたつもりはなかったのに、さすが親友、丸っとお見通しみたいです。
私がそう言った途端、宗親さんから無言のままに発せられた、〝明智、うちの嫁に餌付けしないでくれる?〟という恨めし気なオーラをひしひしと感じつつ、私は大好きなチーズの誘惑にあっさりと陥落する。
ほたるが明智さんに作ってもらったワインレモネードに合うというカプレーゼも、トマトのスライスの上にモッツァレラチーズとバジルが乗っかっていて、すっごく美味しそうで。
タラリと掛けられたエキストラバージンオリーブオイルと、パラパラまぶされた塩コショウの香りがふわりと鼻腔をくすぐった。
(モッツァレラチーズ♥)
声に出したわけではないけれど、表情に物欲しさが滲み出ていたみたい。
「もちろんこれも食べていいよ?」
ほたるからそう畳み掛けられては、宗親さんの了承の言葉を聞く前でも移動を決意せざるを得ないじゃないの。
「きゃー、ほたる、有難う! じゃ、あっち行こっ?」
チーズに誘われるように宗親さんのそばを離れたと同時、背後で彼が私を呼び止める声がしたけれど、鼻先に大好物をぶら下げられた私の耳は意図的にその声をシャットアウトした。
(宗親さん、ごめんなさいっ)
***
「――実はね、そろそろ統和さんの誕生日なの」
ボックス席に移動するなり背後の明智さんをチラチラと気にしながら、ほたるがそう囁いて。
私もつられて小声で「いつ?」と聞き返していた。
「この三十日。ね、知ってた? ここの店名がMisokaなのは統和さんが晦日生まれだかららしいの」
「えっ、そうだったの⁉︎」
初めて聞くこの店の名付けの由来に(なるほどぉー)と思ったと同時、(もし明智さんがもう一日遅く生まれていらしたら、店名は『Oh! Misoka』とかだったりしたのかしら?)とかどうでもいいことを思って、心の中で一人笑ってしまう。
「春凪、いま変なこと考えてたでしょ?」
「えっ」
顔に出してニマニマしたつもりはなかったのに、さすが親友、丸っとお見通しみたいです。