好みの彼に弱みを握られていますっ!
***
お風呂でさんざん甘やかされて。隅々まで愛し尽くされて。
私、宗親さんの腕の中。そのまま温かなお湯に蕩けてなくなってしまいそうな錯覚を覚えてしまった。
お風呂から上がってからもほわほわと夢うつつだった私は、宗親さんに促されるまま彼が用意して下さったドレスにいそいそと着替えて。
どうにかこうにか十五分足らず。超特急で身支度を整えてから彼の愛車――黒のハリアー――に乗り込んだ。
仕事の時とは違ってスーツをキチッと着こなした宗親さんは、いつもの数百倍カッコよくて。
照れるあまり、私は彼から不自然な距離を取ってぎくしゃくと宗親さんの後をついて車まで行ったのだけれど。
リビングで宗親さんと話していた時には予約の時間まで結構ゆとりがあるように思えたのに、車内にある時計を見たら十九時半を過ぎていて、今更ながらびっくりしてしまう。
(お風呂、長すぎたっ)
途端、浴室でのあれやらこれやらがぶわりと頭の中によみがえってきて、私はやたらと照れてしまった。
「――春凪?」
一人真っ赤になりながらヒャーヒャーなっていたら、宗親さんに怪訝そうな顔でキョトンとされて。
そのことに慌てるあまり取り繕うように「じ、時間っ。結構ギリギリですねっ」と言ったら、「春凪があんまり可愛かったから」と意味深に微笑まれた。
(そっ、その含みのある笑顔は反則です!)
宗親さんもお風呂でのことを思い出しておられるのかな?
無意識にそう考えたら自然――。彼に〝妻として〟求められたことを思い出してしまった。
(私、宗親さんと……)
避妊なしで行為に及んだのは生まれて初めてで……。
今日の営みは二人の愛情確認であるとともに、宗親さんとちゃんとした夫婦としてのスタートを切ることが出来た節目のようにも思えて、何だか胸の奥がじんわりと温かくなる。
たった一度きりでお腹に赤ちゃんが来てくれる可能性はとっても低いのかも知れない。
でも――。
確かにこのお腹の中に彼の精を受け止めたんだと思ったら、キュンと子宮の奥が甘く疼いて幸せな気持ちに包まれた。
「春凪、シートベルトを……」
どうやら私、ぼんやりし過ぎていたみたい。
助手席に座ってアレコレ思いを巡らせていた私は、シートベルトのことをすっかり失念してしまっていた。
運転席に乗り込むなり私にそう指摘して。
宗親さんは過保護にも私に覆い被さるようにしてシートベルトを留めて下さった。
「あ……」
瞬間彼からふわりと漂った香りがいつものマリン系とは違うことに気が付いた私は、思わずすぐ傍にいる宗親さんをじっと見詰めた。
スーツ姿に照れまくりでまともに顔を見られなかった宗親さんはやっぱりとってもかっこよくて……。
その上――。
「せっかくなので、春凪に貰った香水を付けてみました」
何でもないことのようにニコッと微笑むそのお顔の破壊力たるや、想像を絶するものがっ。
(私、こんな素敵な人に〝マーキング〟しちゃったんだ……)
不意にそんなことを思って、やたらと照れてしまったのは内緒です。
***
「僕からもプレゼント、ちゃんと用意してあるから。食事の時に渡すね」
助手席に座ってからも夢見心地。
窓ガラスに映る彼をうっとりと眺めていたら、不意に宗親さんがそう言って。
私は「えっ?」と間の抜けた声を出してしまう。
「今日はクリスマスイヴですよ? 僕からだけ何もないとかありえないでしょう? ――お願いだから僕にも格好付けさせて?」
クスッと笑う宗親さんに、(それではまた貰ってばかりのループですっ!)と思ったけれど、ハンドルを握る宗親さんの横顔はとても幸せそうで。
案外黙って彼に甘やかされていることが、宗親さんにとってのご褒美になるのかも知れないと今更のように思い至った。
「……楽しみにしています」
照れ隠し。小声でぼそりと言ったら、宗親さんがとってもとっても嬉しそうに「はい」と微笑んだ。
お風呂でさんざん甘やかされて。隅々まで愛し尽くされて。
私、宗親さんの腕の中。そのまま温かなお湯に蕩けてなくなってしまいそうな錯覚を覚えてしまった。
お風呂から上がってからもほわほわと夢うつつだった私は、宗親さんに促されるまま彼が用意して下さったドレスにいそいそと着替えて。
どうにかこうにか十五分足らず。超特急で身支度を整えてから彼の愛車――黒のハリアー――に乗り込んだ。
仕事の時とは違ってスーツをキチッと着こなした宗親さんは、いつもの数百倍カッコよくて。
照れるあまり、私は彼から不自然な距離を取ってぎくしゃくと宗親さんの後をついて車まで行ったのだけれど。
リビングで宗親さんと話していた時には予約の時間まで結構ゆとりがあるように思えたのに、車内にある時計を見たら十九時半を過ぎていて、今更ながらびっくりしてしまう。
(お風呂、長すぎたっ)
途端、浴室でのあれやらこれやらがぶわりと頭の中によみがえってきて、私はやたらと照れてしまった。
「――春凪?」
一人真っ赤になりながらヒャーヒャーなっていたら、宗親さんに怪訝そうな顔でキョトンとされて。
そのことに慌てるあまり取り繕うように「じ、時間っ。結構ギリギリですねっ」と言ったら、「春凪があんまり可愛かったから」と意味深に微笑まれた。
(そっ、その含みのある笑顔は反則です!)
宗親さんもお風呂でのことを思い出しておられるのかな?
無意識にそう考えたら自然――。彼に〝妻として〟求められたことを思い出してしまった。
(私、宗親さんと……)
避妊なしで行為に及んだのは生まれて初めてで……。
今日の営みは二人の愛情確認であるとともに、宗親さんとちゃんとした夫婦としてのスタートを切ることが出来た節目のようにも思えて、何だか胸の奥がじんわりと温かくなる。
たった一度きりでお腹に赤ちゃんが来てくれる可能性はとっても低いのかも知れない。
でも――。
確かにこのお腹の中に彼の精を受け止めたんだと思ったら、キュンと子宮の奥が甘く疼いて幸せな気持ちに包まれた。
「春凪、シートベルトを……」
どうやら私、ぼんやりし過ぎていたみたい。
助手席に座ってアレコレ思いを巡らせていた私は、シートベルトのことをすっかり失念してしまっていた。
運転席に乗り込むなり私にそう指摘して。
宗親さんは過保護にも私に覆い被さるようにしてシートベルトを留めて下さった。
「あ……」
瞬間彼からふわりと漂った香りがいつものマリン系とは違うことに気が付いた私は、思わずすぐ傍にいる宗親さんをじっと見詰めた。
スーツ姿に照れまくりでまともに顔を見られなかった宗親さんはやっぱりとってもかっこよくて……。
その上――。
「せっかくなので、春凪に貰った香水を付けてみました」
何でもないことのようにニコッと微笑むそのお顔の破壊力たるや、想像を絶するものがっ。
(私、こんな素敵な人に〝マーキング〟しちゃったんだ……)
不意にそんなことを思って、やたらと照れてしまったのは内緒です。
***
「僕からもプレゼント、ちゃんと用意してあるから。食事の時に渡すね」
助手席に座ってからも夢見心地。
窓ガラスに映る彼をうっとりと眺めていたら、不意に宗親さんがそう言って。
私は「えっ?」と間の抜けた声を出してしまう。
「今日はクリスマスイヴですよ? 僕からだけ何もないとかありえないでしょう? ――お願いだから僕にも格好付けさせて?」
クスッと笑う宗親さんに、(それではまた貰ってばかりのループですっ!)と思ったけれど、ハンドルを握る宗親さんの横顔はとても幸せそうで。
案外黙って彼に甘やかされていることが、宗親さんにとってのご褒美になるのかも知れないと今更のように思い至った。
「……楽しみにしています」
照れ隠し。小声でぼそりと言ったら、宗親さんがとってもとっても嬉しそうに「はい」と微笑んだ。