好みの彼に弱みを握られていますっ!
42.夢のような一夜
宗親さんが私を連れて行ってくれたのは、ハイランドホテルの五十階に位置する一六〇平米もあるスイートルームで。
部屋を入って真正面。
大きな肘掛窓からの眺望は、眼下に見える景色が宝石箱をひっくり返したみたいに綺麗。だけど、高層階ゆえに吸い込まれてしまいそうで怖いくらいだった。
夜に、真っ暗な海や川を覗き込んだらスーッと水面に引き込まれてしまうみたいな錯覚に陥ることがあるけれど、まさにそんな感じで。
宗親さんとのタワーマンション暮らしで高い所からの景色には大分慣れてきたと思っていたんだけどな。
マンションの部屋はここまで壁が窓ガラスだらけではないので雰囲気に呑まれて気圧されてしまった。
「すごく綺麗な景色です! でもちょっと怖い……かも」
部屋に入るなり空間を突っ切って窓に駆け寄った私だったけれど、子供みたいに不用意にはしゃいだ結果、余りの高さにクラリとしてしまう。
そんな私にゆったりとした足取りで追いついてきた宗親さんが、ごくごく自然な仕草で肩を抱き留めて下さって、その温もりに心底ホッとさせられた。
宗親さんが背後にいて下さらなかったらきっと私、平衡感覚を失ってその場にしゃがみ込んでしまっていただろうな。
そんな風に思ったら、磨き抜かれた鏡面みたいな窓ガラスに映った宗親さんの優しい眼差しにすら、何だか照れ臭くなってしまった。
「有難う、ございます……」
耳まで熱い。
きっと私、顔も耳も首筋も、出ているところ全部全部真っ赤になってしまってる。
ドレスに合わせて下手に髪の毛をハーフアップにしてしまったから、きっと赤くなったところ、みんな宗親さんに丸見えだよね。
そう思ったらますます恥ずかしくなって。
しどろもどろにお礼を伝えたら、そのままギュウッと腕の中に抱きすくめられた。
「春凪、そんな可愛い反応しないで? 我慢出来なくなってしまう」
「あ、あの……ご、ご予約の時間は……」
予約時間の二〇時まであと十分を切ってしまっている。
いくら二つ上の階とは言え、結構ギリギリなんじゃないかしら。
私を抱きしめたまま切なげに訴えてくる宗親さんに、私はオロオロしまくりで。
てっきりホテルに着いたら五十二階にあるレストランへ直行してそこで食事……となるんだとばかり思っていた私は、時間が押しているにも関わらず寄り道してしまったことに心臓がソワソワと落ち着かない。
宗親さんの腕に抱き締められたままドギマギと問い掛けたら「食事はこちらで出来るように手配してあります」と何でもないことのように言われてしまった。
宗親さんは名残惜しそうに私から離れると、ホテルに備え付けられた電話で「食事の方、よろしくお願いします」と告げて。
程なくして部屋のチャイムが鳴って、沢山の料理がカートに載せられて部屋の中へ入ってくる。
部屋を入って真正面。
大きな肘掛窓からの眺望は、眼下に見える景色が宝石箱をひっくり返したみたいに綺麗。だけど、高層階ゆえに吸い込まれてしまいそうで怖いくらいだった。
夜に、真っ暗な海や川を覗き込んだらスーッと水面に引き込まれてしまうみたいな錯覚に陥ることがあるけれど、まさにそんな感じで。
宗親さんとのタワーマンション暮らしで高い所からの景色には大分慣れてきたと思っていたんだけどな。
マンションの部屋はここまで壁が窓ガラスだらけではないので雰囲気に呑まれて気圧されてしまった。
「すごく綺麗な景色です! でもちょっと怖い……かも」
部屋に入るなり空間を突っ切って窓に駆け寄った私だったけれど、子供みたいに不用意にはしゃいだ結果、余りの高さにクラリとしてしまう。
そんな私にゆったりとした足取りで追いついてきた宗親さんが、ごくごく自然な仕草で肩を抱き留めて下さって、その温もりに心底ホッとさせられた。
宗親さんが背後にいて下さらなかったらきっと私、平衡感覚を失ってその場にしゃがみ込んでしまっていただろうな。
そんな風に思ったら、磨き抜かれた鏡面みたいな窓ガラスに映った宗親さんの優しい眼差しにすら、何だか照れ臭くなってしまった。
「有難う、ございます……」
耳まで熱い。
きっと私、顔も耳も首筋も、出ているところ全部全部真っ赤になってしまってる。
ドレスに合わせて下手に髪の毛をハーフアップにしてしまったから、きっと赤くなったところ、みんな宗親さんに丸見えだよね。
そう思ったらますます恥ずかしくなって。
しどろもどろにお礼を伝えたら、そのままギュウッと腕の中に抱きすくめられた。
「春凪、そんな可愛い反応しないで? 我慢出来なくなってしまう」
「あ、あの……ご、ご予約の時間は……」
予約時間の二〇時まであと十分を切ってしまっている。
いくら二つ上の階とは言え、結構ギリギリなんじゃないかしら。
私を抱きしめたまま切なげに訴えてくる宗親さんに、私はオロオロしまくりで。
てっきりホテルに着いたら五十二階にあるレストランへ直行してそこで食事……となるんだとばかり思っていた私は、時間が押しているにも関わらず寄り道してしまったことに心臓がソワソワと落ち着かない。
宗親さんの腕に抱き締められたままドギマギと問い掛けたら「食事はこちらで出来るように手配してあります」と何でもないことのように言われてしまった。
宗親さんは名残惜しそうに私から離れると、ホテルに備え付けられた電話で「食事の方、よろしくお願いします」と告げて。
程なくして部屋のチャイムが鳴って、沢山の料理がカートに載せられて部屋の中へ入ってくる。