好みの彼に弱みを握られていますっ!
高級レストランのディナーを、ルームサービスで食べられるだなんて思っていなかった私は、コーナー窓のそばへ置かれたダイニングテーブルに並べられていく数々の料理に目を瞠った。
「まずは食前酒から」
宗親さんの言葉に、スタッフさんが椅子を引いて下さって席に着くよう促された私は、ふわふわした足取りのまま腰かけて。
「僕お勧めのシャンパンでいい?」
と聞かれてわけも分からないままにコクコクと頷いた。
給仕係の方かな。
黒いキチッとしたスーツに身を包んだ女性が、美しい所作でワインクーラーからよく冷えた琥珀色の液体をフルートグラスに注ぎ分けて下さるのをぼんやりと眺めて。
その様だけで私はうっとりしてしまう。
「――春凪、ちゃんと起きてる?」
クスッと笑いながら宗親さんに問われた私は、その声にハッとして「お、起きてますっ」と彼に視線を移したのだけれど。
テーブル越し。私の真正面に腰かけた宗親さんはどこまでもスマートでカッコよくて。
私はまたしても夢の中にいるような錯覚に包まれる。
「用があったら声をかけますので」
給仕の方も私たちのすぐそばにずっといるのは所在ないよね。何より《《私が》》、こういうのに慣れてなくて落ち着かない。
チラチラと彼女を盗み見るようにしてそんなことを思っていたら、私の声なき声を汲み取って下さったみたいに宗親さんがスタッフさんにそう声を掛けて。
シャンパンを注ぎ終えると同時、女性は「では御用の向きはそちらのベルでお呼び下さい」と、細かな装飾の施された美しい金のテーブルベルにちらりと視線を投げかけてから、一礼して去って行った。
「まずは食前酒から」
宗親さんの言葉に、スタッフさんが椅子を引いて下さって席に着くよう促された私は、ふわふわした足取りのまま腰かけて。
「僕お勧めのシャンパンでいい?」
と聞かれてわけも分からないままにコクコクと頷いた。
給仕係の方かな。
黒いキチッとしたスーツに身を包んだ女性が、美しい所作でワインクーラーからよく冷えた琥珀色の液体をフルートグラスに注ぎ分けて下さるのをぼんやりと眺めて。
その様だけで私はうっとりしてしまう。
「――春凪、ちゃんと起きてる?」
クスッと笑いながら宗親さんに問われた私は、その声にハッとして「お、起きてますっ」と彼に視線を移したのだけれど。
テーブル越し。私の真正面に腰かけた宗親さんはどこまでもスマートでカッコよくて。
私はまたしても夢の中にいるような錯覚に包まれる。
「用があったら声をかけますので」
給仕の方も私たちのすぐそばにずっといるのは所在ないよね。何より《《私が》》、こういうのに慣れてなくて落ち着かない。
チラチラと彼女を盗み見るようにしてそんなことを思っていたら、私の声なき声を汲み取って下さったみたいに宗親さんがスタッフさんにそう声を掛けて。
シャンパンを注ぎ終えると同時、女性は「では御用の向きはそちらのベルでお呼び下さい」と、細かな装飾の施された美しい金のテーブルベルにちらりと視線を投げかけてから、一礼して去って行った。