好みの彼に弱みを握られていますっ!
 ひえーっ。

 やっぱり見逃しては頂けないみたいですし、今の口ぶり!
 何だか私を罠にハメたっぽく聞こえるんですけど……気のせいですかね!?

 しかも……〝春凪(はな)ちゃん〟って!
 いつもは〝柴田(しばた)さん〟なのに。何の罰ゲームが開始されているのですかっ!?

「おはよ、……ございます。――お、りた、課長……」

 名指しにされては無視するわけにもいかず、観念して恐る恐る顔を上げて声の主の名前をつぶやいたら、織田(おりた)課長ってば()()()()()私のすぐ横の席に腰掛けてきて。

柴田(しばた)春凪(はな)さん。ここでお会いできたのも何かのご縁です。折り入って頼みたいことがあるんですが、聞いていただけますか?」

 って柔らかく微笑むの。

 さっき、さも私をここへ〝誘導した〟ようなことを言った口で、〝ここで会えたのも何かのご縁〟とか、さすがにわざとらしすぎませんか?

 でも、上司に名指し――しかもフルネーム!――でこんな風に(たず)ねられて、ペーペーの私が「お断りします」なんて言えるわけがない。

 私は()()()()()()()()のを承知で、「なんで……しょうか?」と問いかけた。
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