好みの彼に弱みを握られていますっ!
「借りますよ?」

 言って、力なく手にしたままのキーを私の手から抜き取ると、織田(おりた)課長がキーロックを解除なさって。

 ピッという音とともにウインカーがチカチカと2度規則的に点滅をした。

 余りに女の子らしいデザインのキーを織田(おりた)課長が手にしているのがすごく不思議で、涙に潤んだ視界でぼんやりとそのアンバランスな様を見つめる。

 と、何故か助手席側のドアを開けられて、そこに座らされた私は、ついでのように頭にかけられていたジャケットを取り払われて。

 気がつくと取り戻した上着を羽織り直した織田(おりた)課長が運転席に乗り込んでいた。

 それと同時、織田(おりた)課長のスマートフォンがブルッと震えて。
 どうやら何かメッセージが届いたらしいそれに視線を落とすと、一瞬眉根を寄せてから小さく吐息を落とす。

駐車場(ここ)に居座っていたら母が来るかもしれませんので移動しますね」

 言うが早いか、エンジンが掛けられた。

「公道に出ますから、シートベルトをしてください」

 チラリと視線を投げかけられた私は、それすら億劫(おっくう)に思えてなかなか反応することが出来なくて。
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