好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そんなことをぼんやり考えていたら、

「このスペースは利用料金さえ払えば誰からも(とが)められませんのでご安心を。もちろん僕が勝手に連れて来ましたし、お金もこちらがお支払いします」

 そんな意図なんて感じさせないみたいに恩着せがましく言われて、そう言うところもすごく課長らしいなって感心する。

「さぁ、部屋に上がりましょうか。話はそこでゆっくり……」

 こんな大きなマンションの事情にうとい私は、よく分からないまま雰囲気に気圧(けお)されて、そんな課長の言葉に素直にうなずいていた。

 それが、織田(おりた)課長の仕掛けた巧みな罠とも気が付かないで――。
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