好みの彼に弱みを握られていますっ!
 織田(おりた)課長は2名のうちの左側――清楚系――の女性に

「あの、急なんですが、来客用の駐車場をひとつ使わせて頂きたいのですが」

 と仰った。

「お車はもう?」

 駐車区画の描かれた平面図をタブレットで見せられて、織田(おりた)課長が「勝手ながらここに停めさせていただいてます」と左端のひとつを指さした。

「もしどなたかと重なっているようでしたらご指定のスペースへ移動させますが」

 そう続ける織田(おりた)課長に、「そこでしたら向こう数日間は空いておりますので大丈夫です」とにこやかに女性が応じる。

 来客用駐車スペースは全部で10台分確保されているみたいで、幸いそこには予約が入っていないみたい。

 そういうのも全部この方達が管理なさっているんだなと思ったらますます凄い!って思ってしまって。

「どのくらいのお時間ご利用になられますか?」

 聞かれて、織田(おりた)課長が「とりあえず明日いっぱいまで」と仰って、私は仰天する。

 お話をするにしても数十分もあれば済みますし、考えてみれば独身男性の1人暮らしのお住まいに上がり込むとか、結婚前の娘がすることではない気がしてきましたっ!

「あ、あのっ」

 慌てて声を出した時には「さぁ行きましょう」って言われて。

 どうやら私がぐるぐるしている間に駐車場の件については話がついてしまったらしい。
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