俺の気持ちに気づけよ、バーカ!



俺の右手が
行き場をなくして
揺れている。


――俺なんて
  璃奈に釣り合う
  男じゃないのに……

弱気なため息が
真冬の夜風で白く凍る。


すれ違うカップル達を
チラッ。

彼女の手を
当たり前のように握る
男たちに比べ

――なんて俺は
  情けない奴なんだろう

ため息が止まらない。


璃奈を一生
愛し抜く自信はある。

絶対に大事にする。

でも……

『俺以外に
 璃奈を幸せにできる男が、
 いるんじゃないのか?』

そんな不安がよぎり
璃奈の左手を握る勇気が
逃げ去っていく。
< 279 / 332 >

この作品をシェア

pagetop