俺の気持ちに気づけよ、バーカ!
俺の右手が
行き場をなくして
揺れている。
――俺なんて
璃奈に釣り合う
男じゃないのに……
弱気なため息が
真冬の夜風で白く凍る。
すれ違うカップル達を
チラッ。
彼女の手を
当たり前のように握る
男たちに比べ
――なんて俺は
情けない奴なんだろう
ため息が止まらない。
璃奈を一生
愛し抜く自信はある。
絶対に大事にする。
でも……
『俺以外に
璃奈を幸せにできる男が、
いるんじゃないのか?』
そんな不安がよぎり
璃奈の左手を握る勇気が
逃げ去っていく。