俺の気持ちに気づけよ、バーカ!


重いため息を吐きながら、
広い庭を駆ける。

俺の切れ長の瞳を隠すように、
波打つ長めの前髪を揺らす
冷たい北風。



玄関にたどり着き、
乱れ前髪を整えようと
手を顔の前に持ち上げた瞬間

ガラガラガラ

昔ながらの玄関の引き戸が
勢いよく開いた。



大好きな女の、予想外の登場。

驚きで
俺の背中が、簡単にのけ反る。



「はぁ~はぁ~。
 うわっ。桜ちゃん、居たの?」



うわっ!は
こっちのセリフだっつうの。

璃奈だし。

本物だし。

会いたかったし……って。

なんで、璃奈の息が上がってんの?

俺に会いたくて、
古くて軋む長い廊下を
駆けて来たとか?

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