騎士様と合コンして狙い撃ちしたら、まさかの恋仲になれちゃいました。もう離れたくないと縋るので可愛すぎてしんどい。
「なんとか……二人で、話したいんだけど……籤でも作るか……」

 俺は店員を呼んで紙と書くものを借りて、簡単な籤を自作した。もちろんこれも、先輩たちの残した合コン虎の巻によるアイディアだ。書き残したのは誰だかわからないが、感謝はしている。

「あんまりわざとらしいのもなんだし、時間を決めて全員男女二人でずつで話せるようにはするか」

 こういう事に良く気の回るイグナスは、そう言った。俺とエレノアはもう確定だとしても、残る二人の女性陣の思惑がわからない今わかりやすい不正を働く訳にもいかない。

「……エレノアさんに、絶対余計なこと言うなよ」

 俺が敢えて声を低くして二人にそう言ったら、レオポルトはわざとらしく体を震わせた。

「お前の今の顔見たら、逃げられるぞ。せっかく可愛い彼女が出来そうなのに、自重しろよ」

 レオポルトの忠告など、自分が一番理解している。ああいう可愛い女の子が好きそうな、そういう男を彼女の前では出すようにすればそれで良い。

 初対面の誰かの前で、そのままの自分を見てすべて受け入れて欲しいなどという信じがたい幻想は持ってはいない。彼女でしか出さない俺も、また俺になるだろう。そしてレオポルトの指摘した、怖がらせること間違いなしの俺もまた俺で間違ってはいない。

 二面性のない人間など、いない。それが、もし多面に見えるようなものだったとしても俺は驚きはしない。世界中すべての人の前で、善人で居られる人間がどこに居る?

「絶対に見せない。エレノアさんが好きな俺は、なんとなくわかっているから」

 やがて三人の女性陣は席に戻り、イグナスは彼女たちに二人で話したいからと籤の提案をした。
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