騎士様と合コンして狙い撃ちしたら、まさかの恋仲になれちゃいました。もう離れたくないと縋るので可愛すぎてしんどい。
 エレノアは中身も俺の想像を絶するほどに……いやもしかしたら、正体は天使か妖精かもしれないと疑うほどに可愛かった。

 男の心を惑わす危険人物として、公的に認定した方が良いかもしれない。男っていうか、彼女が惑わせるのはこれからは俺しかいないようにするけど。

「初めて見た時に、この人の彼女になりたいって思って……」

 そう真っ赤に頬を染めて言われた時に、この後付き合うためにどういう風に話を持っていくとか、そういった計算は頭の中からすべて消し飛んだ。

 俺が現在諜報活動を主な仕事としている特務機関に所属しているという事は、要するに「人を上手く騙す適正」があるということだ。

 言葉巧みに段取り良く、ターゲットから自分の欲しがっていた情報を抜く。そういった授業の成績が良かったのは、別に俺が意図した訳でもない。正直に言えば新人なのに異例の抜擢と言われ、また周囲から「グリフィス家か」と言われるのも面倒で辟易していた。

 だから今回も「上手くやる」つもりでは、あった。本気の恋の前では、互いに本音でぶつかり合うしかないのも、その時に初めて知った。

「俺。エレノアに本気だから」

 そう言った時に頷いた彼女の顔を見て、本気であることをここで示すために、今夜はこのまま攫わない方向性で行こうと判断した冷静な俺が出来たばかりの恋人が巻き起こした可愛すぎる突風をまともに喰らい吹き飛ばされるところだった。危ない。

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