騎士様と合コンして狙い撃ちしたら、まさかの恋仲になれちゃいました。もう離れたくないと縋るので可愛すぎてしんどい。
 旅行帰りどう考えても様子がおかしかったエレノアに、悲壮な顔をして別れを告げられた後、俺はその足で彼女の祖父を訪ねた。

 彼女の実家の情報などは、情報を調べることが仕事の俺にとっては調べるのは容易い。彼女の祖父が経営するフォックス商会は価格などはそれほど安くないが安定した堅実で信頼出来る商会として王都では評価されて有名だ。俺は現在騎士を職業としているが、そういった商売をするのも面白そうだなとは思った。

 あれだけ何度聞いても答えなかったのだから、彼女の身内に聞くしかない。俺の希望的観測による予想が正しければ、もしかすると彼女の祖父が俺との結婚を反対しているのなら、特に騎士という職業には未練などないのでこちらの商会を継ぎたいと、そう言うつもりだった。

 そうなれば商人になるための特殊な教育を数年受けることになるだろうが、特に支障はない。

 俺は自分に出来ないとは思わなかったし、エレノアをあんな風に泣かせることになるのなら、彼女以外の全てを捨てても別に構わなかった。

 そして念願だった祖父に面会を果たした俺が目にしたのは、予想外の愛する孫娘エレノアを思って泣くただ一人の祖父の姿だった。

 威厳を持った雰囲気を持つ老齢の男性が、会ったばかりの俺の前で声を絞らせ泣いていた。彼の姿を見てこれはよっぽどのことだろうと覚悟を決めたが、事情を聞くにつれ、身体中が静かな灼熱の怒りで満たされ、原因となったその女をどうやって地獄に引き摺り落とすかという手段を、数え切らない程に考えていた。

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