私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
※※※


「おーい? 深月? どしたん?」


陽菜の呼びかけで、私は我に帰った。


「急に黙っちゃってさ……あたし、ひょっとして変なこと聞いちゃった?」


陽菜が申し訳なさそうにしゅん、とうなだれる。
私は慌てて、


「ううん! ごめん、ちょっとぼうっとしてただけ。昨日遅くまで起きてたから、寝不足で」

「あ、あたしもー。
うちの学校、夏休みの宿題多すぎるよね!
数学の問題集なんかやってもやっても終わらなくて、昨日危うく徹夜するとこだったよ〜」



私の寝不足の原因は、宿題ではないのだけれど……。

私はそこについては触れず、『そうだよね』と陽菜に同意した。


「陽菜は特に大変だったよね。夏休み中も土日以外は毎日、テニス部の練習があったんだもん」

「そうそう! 暑いし朝早いしでめっちゃ辛かったよ! そのうえ宿題も山盛りとか、鬼にも程があるよ〜」


ぐったりした様子の陽菜と、夏休みの話をしているうちに、担任の佐原(さはら)先生がやってきた。

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