私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
宝城先輩の言葉は的外れだ。

優星くんは、私のサイトのことなど、ずっと前から知っている。

けれど。


「……ねぇ、あれ、マジかな。光峰さん……人は見た目によらないよね」

「俺、オタク女とか無理なんだけど」

「5年間も変な小説書いてるとかさぁ、やばくない? 逆に心配になるんだけど」

「光峰、勉強しすぎでおかしくなってんじゃねぇの?」

「あ、見つけた。このサイトじゃない? 『〜eternal garden〜』って……。うわぁ……」


クラスメイトたちが、ひそひそと話をしながら、こちらを見ていた。

この状況で肯定したら、クラスメイトたちはどう思うか。

それに。


「……ねぇ、どういうこと? 深月……?」


先輩の話を聞いた陽菜が、信じがたいものを見る目で私を見下ろす。


(……陽菜に、嫌われたくない)


いくらでも誤魔化しようはある。

『そんなサイト知らない』『漫画のカフェなんて行ったことがない』と否定すればいい。
証拠なんて何もないんだから。

そうだ。否定しちゃえばいい。

烈華様も死んでしまったんだし。

『エレアル』も『〜eternal garden〜』も全部捨てて、忘れちゃえばいい。

そうすれば、私は、今まで通りの学校生活を送れる。


「ねぇ。このサイト作ったの、アンタでしょ?」


けれど。

けれど、私は。


「……はい」


否定、できなかった。

だって、『〜eternal garden〜』には、私の烈華様への愛が詰まっている。
5年間ずっと一緒だった、大事な大事な、私の小さなお城。

『そんなサイト、私は知らない』なんて、言えるはずがなかった。

そんな簡単に捨ててしまえるなら、私はこの5年間、現実と2次元の壁に悩んでない。



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