私は今日も、虚構（キミ）に叶わぬ恋をする。

宝城先輩が口をパクパクさせる。


「は……はぁ？！　面白いわけないでしょ！？　あんな恥ずかしい小説！」

「読みもしないで知った顔で批判するほうが、よっぽど恥ずかしくないですか？」

「読まなくたってわかるわよ！　
好き勝手な妄想書き散らした自己満小説でしょ！？」

「深月の小説は、甘いところも苦いところもあって、あっと驚く展開や泣ける展開がたくさんあって、いろんな人を楽しませてるんです。
何より、大好きな人への愛情に溢れてる」

「あ、愛情……？」


宝城先輩が、恐れるように一歩下がる。


「深月の小説からは、伝わってくるんです。焔烈華をどれだけ深く愛しているかが」

「愛してるって……たかが漫画のキャラでしょ？」

「キャラですよ？　それの何がいけないんですか？
みんな、テレビのアイドルと結婚したがるし、目に見えもしない神様を信仰するじゃないですか。
それと何か違いますか？」

「で、でも……」

「ともかく、深月のことも、深月の小説も、馬鹿にしないでください。

俺は、焔烈華に恋する深月が、大好きなんです」