私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「……優星くん」


私は、胸がじわりと熱くなって、泣きそうだった。


(……こんな私のことを、『大好き』なんて……)


ん?

……『大好き』?


「……っ!?」


いや、違うよね!?
《友達として》って意味だよね!?

別の意味で、私の心臓が高鳴ってしまった。


優星くんの熱い言葉に、クラスメイトもざわついていた。

宝城先輩の仲間たちは、反対に勢いを失って黙り込む。


そんな中で宝城先輩は、苛立たしげに眉を顰めている。

「なっ……によ、それっ!! 
マジ理解できないんだけどっ!!
揃いも揃って頭おかしいんじゃ────、」

「頭おかしいのは、どう見てもお前ひとりだよな?」


宝城先輩が、不意に固まる。

教室の入り口を見ると、佐原先生が立っていた。
顔は穏やかに笑っているが、目が全く笑っていない。


(あ、見覚えのある表情……!)


先生は、つかつかと足早に宝城先輩に歩み寄り、その前に立つと、にっこりと笑った。

宝城先輩は、怯え切った顔で先生を見上げる。


「あ、あの……」

「いい加減にしろ、このバカ!!」


先生は、宝城先輩の頭を、思い切り拳骨でぶん殴った。


「せ、……先生!?」


流石に学内暴力はまずいんじゃないですか!?

どうしよう!?

私のせいで、佐原先生が教師をクビになっちゃう……!!
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